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エヴォラ歴史地区(世界遺産登録:1986年)

エヴォラ歴史地区は、ポルトガル東部、アレンテージョ地方の中心都市エヴォラにある史跡です。

エヴォラは古代ローマが支配した時代から中世・近世に至るまでの重要な建造物が幾つも残っており、「博物館の町」といわれています。

この町の起源は、古代ローマ時代にあります。

ローマ帝国の重要都市として誕生し、その後、西ゴート族による支配を経て、715年にイスラム教徒の支配下に置かれます。

イベリア半島で吹き荒れるレコンキスタにより、1165年にキリスト教徒がエヴォラを奪還すると、その後、13世紀になるまではレコンキスタの拠点になりました。

ここからコンキスタドールたち(レコンキスタの戦士たち)が各都市の奪還に動いたのです。

14~16世紀のアヴィス朝の時代には、エヴォラは頻繁に議会が開かれる政治的に重要な都市になり、それを受けて、1559年にエスピリドゥ=サント大学(現エヴォラ大学)が設立されました。

このことがきっかけで、エヴォラは学問の中心都市としても発展をしていきます。

エヴォラはまた、ルネサンスの中心地にもなり、国内外から多くの芸術家たちが住む町になりました。

近世に入り、政治の中心地としての役割がなくなり、町は衰退していきましたが、それでも古代ローマの重要都市からレコンキスタの拠点、学問の中心都市にもなったという輝かしい歴史の面影は今尚、街中に色濃く残っています。

エヴォラ歴史地区 -2-

エヴォラの町は、全長約6kmの城壁で囲まれています。

そして城壁内に入ると、そこはまさにポルトガル史の博物館です。

町のシンボル的存在は、エヴォラ大聖堂です。

この聖堂は、1184年~1204年に初期ゴシック様式で造られましたが、1280年~1340年に拡張工事が行われ、それを機に聖堂では頻繁に増改築が行われます。

外観は花崗岩でできた壁に覆われ、飾り気のないものです。

しかし中に入ると、ポルトガル栄光の時代を感じさせる素晴らしい装飾を随所に見ることができます。

13世紀にはゴシックの回廊ができ、16世紀にはマヌエル様式の豪華なエスポラオン礼拝堂が加わり、18世紀にはバロック様式の主礼拝堂が新たに設けられました。

これら数世紀にわたる増改築で、幾つもの建築様式を取り入れたオリジナリティ溢れる聖堂になっていきました。

もう一つの有名な聖堂は、サンフランシスコ聖堂です。

ここには壁や柱が5000体の人骨でできている礼拝堂があり、そこは別名「骨の家」と呼ばれています。

この聖堂は、修行僧の瞑想の場所として主に使われていました。

ローマ時代の面影を残すのは、ディアナ神殿跡です。

2世紀末にローマ人によって建てられた神殿跡地には僅かに骨組みが残る程度ですが、それでも十分に見応えがあります。

世界遺産に登録された物件はこれ以外にもまだまだあり、観光客にとって、見どころが尽きない町です。